街の人々は、この空間に何を視るか
まちづくりの意見収集は、会議室で言葉を集める形式が多い。しかし言葉にならない感覚や、会議に来ない人の声は、そこには現れない。NESSが開発してきた画像生成AIを用いた手法を行政との連携に持ち込み、綾瀬と中野の2地域で社会実験を行った。来街者がスマートフォン一つで街の未来を画像として提案し、その場で印刷して持ち帰る。意見を「述べる」のではなく、「見せる」回路を設けることで、これまでまちづくりに参加しにくかった層を巻き込もうとした実践である。

FIG.1
1-アイデア・リサーチ・提案|2-課題共有|3-サウンディング|4-注目
DIAGRAM
1.アイデア・リサーチ・提案
2.課題共有
3.サウンディング
4.注目
綾瀬の高架下を歩いた参加者は、フィールドワークで撮影した写真をアプリに読み込み、AIにプロンプトを打ち込んだ。出力されたのは「2040年にあってほしい高架下の景色」だ。高架の柱を活かした秘密基地、ツリーハウスを連想させる構造。それは行政のアンケートには現れないイメージだった。目の前の柱や暗さ、音の反響といった身体的な手触りから、直感的に立ち上がってきたビジョンである。

FIG.2 綾瀬駅高架下フィールドワーク
中野では、駅前広場に開いた実験ブースに38名が訪れ、142枚の画像が生成された。10歳未満の子どもが12名、AIを普段使わない層も含まれた。タイピング不要の音声入力[*1]で設計されたアプリは、デジタルに不慣れな高齢者や子どもが「雑談するような感覚」で言葉を吹き込める環境をつくった。生成と投票[*2]を繰り返すうちに、参加者は他者の画像に触発されながら、自分自身のイメージを少しずつ更新していく。これは単なる意見収集ではなく、想像力そのものを育てるプロセスだ。最終的に紙という静的な媒体に印刷[*3]し、アイデアを思い出として持ち帰ってもらった。

FIG.3 中野駅前実験での画像生成の様子
2地域の実験が共通して問うていたのは、意見収集の形式そのものだ。言語で意見を述べることを前提とした従来のワークショップでは、参加者は「知っている人」と「発言できる人」に絞られていく。画像を介することで、語彙や知識ではなく直感と感覚が入力になる。
生成された画像は、行政が進める計画説明会での展示や、鉄道事業者への提案につながる予定だ。市民の「こうなったら面白そう」が、計画の言語に翻訳される手前[*4]で、どれだけ多くの人の感覚を束ねられるか。問いかけと実証実験はこれからも続けていく。

FIG.4 アイデアを印刷して持ち帰る
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