
Living Lens: 生き物とともにつくる都市デザイン入門
排除されてきた存在を、都市に招き入れる
都市は、人間のために設計されてきた。では、都市の中でひっそりと生きる生き物たちは、どのような視点でこの空間を見ているのだろうか。
「排除ベンチ[1]」という言葉がある。ホームレスの人が横になれないよう意図的に手すりを設けたり、形状を変えたりしたベンチのことだ。クライアントのニーズに忠実に応えた結果として生まれたこのプロダクトは、デザインが何を排除し、何を包摂するかという問いを鋭く突きつける。今回のプログラムは、その問いを「生き物」に向けることから始まっている。

技術は、誰の視点から生まれるか
人間の視点のまま技術を考え続けると、ある種の盲点が生まれる。何を問題とみなし、何を解決とよぶか。その判断軸そのものが、西洋近代の合理主義や資本主義的な論理に知らず知らず規定されてしまう。効率化、最適化、管理。それらの言葉が自明のものとして機能するとき、そこからこぼれ落ちているものの存在には、なかなか気づけない。
私たちは生き物の視点を「インストール」できないだろうか。ダナ・ハラウェイは『伴侶種宣言』のなかで、人間と非人間は対等な「重要な他者」として互いに関係しあいながら世界を構築している、と論じた。[2]都市のデザインにこの視座を持ち込むことで、これまで管理・排除の対象だった生き物が、空間を共につくる主体として立ち現れてくる。

身近なものとしての生き物の視点
日鉄興和不動産・大成建設との共催で始まった全四回のプログラムは、そうした前提を問い直す場として設計された。
重要なのは、生物多様性を遠い技術課題として捉えないことだ。人工林の管理や磯焼け[3]の問題は確かに深刻だが、個人や設計者が動かせるスケールにない。このプログラムが向かうのはその手前、自分の認識を変えることである。三人称的な管理対象としてではなく、二人称的な関わりとして生き物と向き合いたい。
そのための方法がフィールドワークである。都市の中で生き物たちがどう暮らしているかを、自分の目と身体を使って観察することで、まちの見方そのものが変わる。それは新しい知識を加えることではなく、見る回路ごと書き換えるような経験だ。私たちがいつのまにか身につけてしまった「近代的」な技術観を、生き物とともに眺め直してみたい。






セッション一覧
第1弾
2025/03/05
中條 麟太郎(株式会社LearnWiz 代表取締役CEO, 研究者)、岡部 真久(クロマツプロジェクト代表、ランドスケープアーキテクト, 作庭家)、多賀 洋輝(株式会社バイオーム 取締役COO)、井桁 由貴(東京大学大学院新領域創成科学研究科・特任研究員)
- インプットトーク:データから生き物や環境の実態を把握する
- フィールドワーク:生き物の視点を用いて現地を歩き回り、手掛かりを見つける
- メインワークショップ:人間を含む多様な『私』が交差する空間をデザインする
- 講評会
第2弾
- KICKOFFトーク (2025/09/11)
奥田 宥聡(合同会社Poietica 共同代表) - Field Research / Collecting Data|敷地のコンテクストを探索する・リサーチする (2025/09/28)
片野 晃輔(造園ユニットveig)、多賀 洋輝(株式会社バイオーム) - Collecting Data / Quick Prototyping|データや新たな知見を集積し、アイデアを素早く検証する (2025/10/09)
中條 麟太郎(研究者) - Advancement|得られた知見を発展させ、具体のデザインへとつなげる (2025/10/22)
